病気のコラム

HOME病気のコラム【獣医師監修】ノーベル生理学・医学賞で話題の「制御性T細胞」が動物の痒みに効くワケ!?
2025.10.14
グループ
皮膚科

【獣医師監修】ノーベル生理学・医学賞で話題の「制御性T細胞」が動物の痒みに効くワケ!?

#病気の解説

今年のノーベル生理学・医学賞は「制御性T細胞の発見」に贈られました。日本人の大学教授も研究に大きく関わっており、この事もとても話題となりましたね。

実は、ワンちゃんやネコちゃんのかゆみの原因となるアトピーにも、この「制御性T細胞」が大きく関わっていることが分かってきています。

まずはアトピー性皮膚炎のしくみ

犬アトピー性皮膚炎や猫アトピー皮膚症候群は、主に次のような流れで起こります。

  1. 皮膚のバリア機能が弱まり、アレルゲン(花粉やハウスダストなど)が皮膚から侵入
  2. 免疫の司令塔であるTh2細胞というタイプのT細胞が過剰に反応
  3. Th2細胞からIL-31という“かゆみ物質”が出て、神経を刺激し「かゆい!」と感じる
  4. その結果、かき壊しや炎症が悪化してしまいます

このTh2細胞の「暴走」を止めるのが、免疫のブレーキ役と呼ばれる「制御性T細胞」です。しかし、アトピー体質の犬や猫では、この「制御性T細胞」が少ないことが分かっています。

腸と免疫の意外なつながり

腸は「第二の免疫臓器」と呼ばれるほど、体の免疫と深く関係しています。腸の中には数百種類以上の腸内細菌がすみつき、チームのように協力して体を守っています。

腸内細菌の中には、「短鎖脂肪酸(とくに酪酸)」を作り出す菌がいます。この「酪酸」は、腸の免疫細胞に働きかけて「制御性T細胞を増やす」ことが分かっています。つまり、「腸内細菌を整える=免疫のバランスを整える」ことにつながるのです。

腸からアトピーを改善するアプローチ

アトピーを根本から改善するには、かゆみを抑える薬だけでなく免疫のバランスそのものを整えることが重要です。近年注目されているのが、腸内細菌を介して「制御性T細胞」を増やすアプローチです。
具体的には乳酸菌やビフィズス菌や酪酸産生菌が最終的に酪酸を作り出し、「制御性T細胞」を増やす。またオリゴ糖がこれらの菌の“エサ”となり、菌のリレーをより活発にします。
このように、腸内細菌を整えることで「制御性T細胞」が増え、Th2細胞の暴走が抑えられ、結果的にIL-31(かゆみ物質)が減り、かゆみが軽くなると考えられています。

こちらは猫アトピー皮膚症候群に向けて腸内細菌を整えることで皮膚の痒みの改善効果が見られたという論文です。当院に所属しております皮膚専科の川野浩志先生はこの論文の執筆に関わっております。

まとめ

  • アトピーの原因は免疫のバランスの崩れ
  • 「制御性T細胞」は免疫のブレーキ役
  • 酪酸などの短鎖脂肪酸が「制御性T細胞」を増やす
  • 腸内細菌を整えることが、かゆみを根本から和らげるカギ

最後に

腸と免疫の関係は、まだ研究が進んでいる分野ですが、「腸を整えることで皮膚の健康も良くなる」という考え方は、今や人でも動物でも注目されています。
お薬で症状を抑えることも大切ですが、体の内側から整えることも、アトピーケアの重要な一歩です。
もしワンちゃん・ネコちゃんの皮膚トラブルでお悩みでしたら、お気軽に当院までご相談ください。

監修

川野浩志(獣医学博士、日本獣医皮膚科学会認定医)

  • 東京動物アレルギーセンター センター長
  • 藤田医科大学 消化器内科学講座 客員講師