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2026.04.27
グループ藤沢院
腫瘍科

血管肉腫の三大治療と補助療法|認定医が教える「後悔しない」治療プランの立て方

#病気の解説

はじめに

血管肉腫の多くは、脾臓や心臓、そして肝臓などに発生し、出血や痛みを引き起こしながら、非常に速いスピードで進行していくがんです。あっという間に命を脅かすことも少なくありません。もし愛するご家族がこの病気と診断されたとき、その深い絶望は計り知れないものだと思います。

それでも、少しでも苦痛を取り除き、大切な時間を守るために何ができるのか——

その選択肢を提示することが、私たちの役割だと考えています。

血管肉腫とは?脾臓や心臓に発生する「進行の速いがん」の正体

血管肉腫は、血管の内側を構成する細胞(血管内皮細胞)が腫瘍化したものです。血管の豊富な臓器である脾臓・心臓・肝臓などに発生しやすい特徴があります。
この腫瘍は、内部に血液をため込む袋状の構造をとることが多く、非常にもろいため、わずかな刺激でも破裂し大量出血を引き起こします。特に心臓に発生した場合は、出血によって心臓を包む膜(心膜)の中に血液が溜まり、心臓の動きを妨げる心タンポナーデという致命的な状態に陥ることがあります。
さらに血管肉腫は悪性度が高いことが多く、進行が非常に速いため、早期から転移を起こしやすく、短期間で命を脅かす腫瘍です。

部位別の治療アプローチ|手術と内科的治療の組み合わせ

脾臓・肝臓

脾臓に発生した場合、第一選択は手術による脾臓摘出術です。

脾臓は免疫や血液処理に関わる臓器ですが、他の臓器で代替が可能なため、摘出自体は生命維持に大きな支障をきたさないことが多いとされています。
肝臓の場合は臓器全体の摘出はできませんが、病変が限局している場合には部分切除が検討されます。ただし、血管肉腫は進行が速く、診断時点で目に見えない転移が存在している可能性が高いため、手術単独での治療には限界があります。そのため、術後には残存している可能性のある腫瘍細胞に対して化学療法の併用が推奨されます。

心臓

心臓に発生した血管肉腫は、解剖学的な制約から手術による切除が極めて困難です。そのため、基本的には化学療法を中心とした内科的治療が主軸となります。
また、心タンポナーデに対しては一時的に血液を抜く処置(心膜穿刺)などの対症療法も重要となります。

化学療法(抗がん剤)の実際|副作用と通院頻度のバランス

血管肉腫の治療は、苦痛のコントロールが重要な目的となります。生存期間の延長は、目的ではなく、結果として得られるものです。そのため、薬剤の選択は効果だけでなく副作用や通院頻度も踏まえて慎重に行います。

抗がん剤

① ドキソルビシン

  • メリット:エビデンスが最も豊富で標準的治療
  • デメリット:点滴投与のため時間を要する・心臓への負荷がある

② エピルビシン

  • メリット:ドキソルビシンと同系統で効果が期待できる・心毒性が比較的軽減されている
  • デメリット:エビデンスはドキソルビシンに劣る・点滴投与が必要

③ リポソーム封入ドキソルビシン

  • メリット:心臓への負担軽減が期待される
  • デメリット:高額・アレルギーや手足症候群のリスク・点滴投与が必要

④ ビンブラスチン

  • メリット:心毒性がない・短時間で投与可能
  • デメリット:投与間隔が短い・単剤としてのエビデンスはやや劣る

このように、それぞれの特徴を踏まえながら、ご家族の希望や生活背景も含めて最適な選択を一緒に組み立てていきます。

治療効果を高めるための「補助的治療」という選択肢

近年では、抗がん剤に加えてβ受容体遮断薬(心臓治療薬)が、腫瘍細胞の増殖抑制や抗がん剤感受性の向上に寄与する可能性が報告されています。適応がある症例では、こうした補助療法も組み合わせながら、より効果的な治療を目指します。

さいごに

血管肉腫は、確かに非常に予後の厳しいがんです。それでも私たちは、その子とご家族にとって最も意味のある時間をどう守るかを常に考え続けています。共に過ごせる時間を延ばすことが難しい場合であっても、その時間の中身をより濃く、より穏やかなものにすることは決して不可能ではありません。がんと向き合う時間は決して無意味なものではなく、むしろ深い愛情を注ぐことのできる、かけがえのない時間だと考えています。ご不安なことがあれば、どんな些細なことでも構いません。是非、クロス動物医療センター藤沢にご相談ください。

クロス動物医療センターグループ 獣医腫瘍科認定医II種 大山広朗