病気のコラム
猫の肥満細胞腫を部位別に徹底解説|認定医が教える最新の診断・治療戦略
はじめに
猫の肥満細胞腫は、犬と同様に体表のしこりとして認められることが多く、皮膚腫瘍の中では約20%を占める比較的遭遇頻度の高い腫瘍です。
しかしこの病気は皮膚だけでなく脾臓や腸管といった内臓にも発生し、発生部位によって症状や予後が大きく異なることが特徴です。
そのため、犬の肥満細胞腫と同様の認識で評価するのではなく、猫特有の病気として理解し、全身的な視点で診断・治療を行うことが重要となります。
発生部位別の特徴と治療
【皮膚型】頭部や耳にできやすいしこりの特徴と治療
特徴
最も一般的なタイプであり、多くは孤立性のしこりとして認められます。発生部位は頭部(特に耳介)が多く、大きさは0.5〜3cm程度、境界明瞭で毛のない白色の結節として観察される事が多いです。悪性度の低い症例が多く、予後は比較的良好とされています。
しかし、
- 多発性(特に5病変以上)
- 腫瘍の大きさ1.5cm以上
- がん細胞の分裂数の増加
こららの特徴がある場合は、予後が悪い可能性があります。
また猫では、リンパ節転移の頻度が比較的高い(約60%)にも関わらず、必ずしも予後と相関しない点が特徴的です。さらに重要な点として、皮膚のしこりが原発ではなく、脾臓型や腸管型からの転移として出現している可能性も否定できません。
したがって、体表に肥満細胞腫を認めた場合には、全身的な評価が必須となります。
治療
孤立性で全身に多発していない場合は、外科的切除が第一選択となります。犬と比較して広範な切除を必要としないことが多く、適切な切除により良好な局所制御が期待できます。
【脾臓型】猫に最も多い脾臓腫瘍|貧血や血液検査での見つけ方
特徴
猫における脾臓腫瘍の中で最も一般的な腫瘍の一つです。
臨床的には
- 貧血(14〜70%)
- 脾腫(しこりを形成しない脾臓全体の腫大が多い)
- 肥満細胞血症(血液中に本来いないはずの肥満細胞が確認されること)
などが特徴として挙げられます。
特に肥満細胞血症は重要な所見であり、血液中に肥満細胞が確認された場合は本疾患を強く疑います。また脾臓の穿刺細胞診は出血リスクを伴うため、侵襲的検査に先立ち血液塗抹での評価を行うことが推奨されます。
治療
第一選択は脾臓摘出です。外科単独でも一定期間の生存が期待される一方で、術後化学療法による明確な生存期間延長効果については現時点で十分な科学的根拠はありません。
【腸管型】最も注意が必要なタイプ|嘔吐・下痢に隠れたリスク
特徴
発生頻度は低いものの、最も侵襲性が高く、非常に注意を要するタイプです。リンパ節、肝臓、脾臓への転移率が高く、60%以上で転移が認められるとされています。
また、腫瘍細胞の形態が非典型的であることがあり、他の消化管疾患(リンパ腫など)との鑑別が難しい場合もあります。
臨床的には嘔吐や慢性下痢などの消化器症状として発見されることも多く、腫瘤として認識されにくい点にも注意が必要です。
治療
外科的切除に加え、抗がん剤や分子標的薬を組み合わせた集学的治療が基本となります。
さいごに
猫の肥満細胞腫は、発生部位によって症状、治療方針、予後が大きく異なる腫瘍です。
日常生活の中で体表の変化に気づいた際には、早期に動物病院を受診することが重要です。また、定期的な健康診断により早期発見につながる可能性もあります。
小さな変化を見逃さないことが、愛猫の将来の選択肢を広げることにつながります。気になる点があれば、クロス動物医療センター藤沢にご相談ください。
クロス動物医療センターグループ 獣医腫瘍科認定医II種 大山広朗