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2020.04.01
グループ
皮膚科

ペットの腸内細菌と攻撃性について

#病気の解説

dermatology report 東京動物アレルギーセンター

ペットの腸内細菌

はじめに

世界中の多くの研究者が腸内細菌にターゲットを絞り様々な仮説を立て、検証を繰り返し、裏付けをとった腸内フローラに関する論文が毎日のようにアップデートされています。 そんな中、2019年に犬の腸内フローラと攻撃的な行動が関連するという衝撃的な結果がアメリカのオレゴン州立大学の研究チームが発表しました。

研究内容

闘犬場からレスキューされアニマルシェルターに保護されている21頭の攻撃性のある犬(aggressive dogs)と10頭の攻撃性のない犬(non-aggressive dogs)の合計31頭の犬(ピットブルタイプ) の腸内フローラを解析しました。 攻撃性のある犬とは「唸る」、「歯を剥く」、「噛み付く」、「突進する」などの攻撃行動が見られましたが、攻撃性のない犬はこれらの行動が見られませんでした。

腸内フローラを比較した結果

全ての犬たちの便サンプルから検出された腸内フローラは、ファーミキューテス門、フソバクテリア門、バクテロイデス門、プロテオバクテリア門が大勢を占めていました。しかし、これらの分布が攻撃性のある犬と攻撃性のない犬ではっきりと異なっていました。 攻撃性のある犬ではファーミキューテス門が豊富で、攻撃性のない犬ではフソバクテリア門とプロテオバクテリア門がより豊富でした。 具体的には攻撃性のある犬ではファーミキューテス門の中の乳酸桿菌科(Lactobacillaceae)が豊富で、攻撃性のない犬のグループではフソバクテリウム科が豊富でした。 この研究で、攻撃性のある犬とそうでない犬の腸内フローラの分布にはっきりした違いが見られ、「攻撃性」と「腸内フローラの分布」に統計的な関連があることを示しました。

考察

犬の腸内に生息する細菌の組成が攻撃的な行動に影響を与える可能性があるということが考えられます。 腸内細菌によって行動がコントロールされるとのはイメージがつきにくいですが、脳の活動と腸内環境の関連を示す「脳腸相関」という言葉があります。脳内で活躍する「ドーパミン」、「セロトニン」、「ノルアドレナリン」、「GABA」などの神経伝達物質は脳内ホルモンとも呼ばれますが、実は50%~90%は腸内細菌で作られていることが2012年のアイルランド国立大学の研究で分かっています。 うつ病の時に問題となる「セロトニン」は「トリプトファン」から作られますが、この「トリプトファン」は実は腸内細菌が作るんです。さらに「GABA」は乳酸菌やビフィズス菌たちがを作っているんです。 例えば、ストレスがかかると、ストレスに対抗するように神経伝達物質である「セロトニン」などが多く分泌されてストレスを減らすように働いています。 ところが、腸内細菌が乱れているとストレスと戦う“武器”がなく、ストレスに打ち勝つパワーが足りません。 蛇足ですが、脳と腸がお話ししているという「脳腸相関」以外にも皮膚と腸がお話ししている「腸皮膚相関」という言葉もあり腸内細菌が皮膚のコンディションが腸内環境に左右されです影響を与えていることを意味します。 つまり、「ストレス⇒肌荒れ」という方程式は、腸皮膚相関が関連した腸内細菌の乱れが原因であると考えると理解できます。 東京動物アレルギーセンターでも、腸内細菌をどう改善すればアレルギーの改善につながるかを日々追求しています。 アレルギーでお悩みの方がいらっしゃったら是非一度ご相談下さい。 東京動物アレルギーセンター https://taac.jp 【参考文献】 Kirchhoff NS et al.The Gut Microbiome Correlates With Conspecific Aggression in a Small Population of Rescued Dogs (Canis familiaris).PeerJ. 2019