病気のコラム
犬・猫の治らない下痢に注意|その影に潜む腸の「がん(悪性腫瘍)」
はじめに
犬や猫が下痢をしてしまう…
そんな理由で動物病院を受診される方はとても多く、下痢はご家族にとって身近で一般的な症状です。
しかし、下痢の原因は実に様々で、その中には早期発見が大切な病気や、命に関わる重大な病気が隠れていることもあります。今回は特に慢性的な下痢や悪性腫瘍(がん)との関連について解説します。。
犬・猫の下痢を引き起こす主な原因
下痢の原因は、一時的なものから深刻なものまで多岐にわたります。
1. 短期間で治ることが多い「一過性の下痢」
- 食べ過ぎ
- フードの急な変更
- 異物の誤食
- 環境の変化によるストレスや免疫低下
これらは対症療法や環境改善で、比較的スムーズに落ち着くことが多いタイプです。
2. 【年齢別】注意が必要な下痢の原因
年齢によって、疑うべき病気の種類が変わります。
| ステージ | 疑われる主な原因 |
| 幼少期(子犬・子猫) | 腸内細菌の乱れ、寄生虫(回虫・コクシジウム・ジアルジアなど)、食物アレルギー |
| 中高齢期 | 膵炎、膵外分泌不全(EPI)、慢性腸症(CE:食事反応性腸症/免疫介在性腸症)、悪性腫瘍(がん)、寄生虫 |
同じ「下痢」でも、年齢や背景によって適切な検査と治療が大きく異なります。
下痢の原因を突き止めるための「5つの検査」
原因を絞り込み、最適な治療を選択するために以下の検査を組み合わせて行います。
- 便検査:寄生虫や消化状態などを確認します。
- 血液検査:低アルブミン血症や膵酵素などから病態を推測します。
- レントゲン検査:消化管のガス、便の貯留や異物、腫瘤の存在を確認します。
- 超音波(エコー)検査:腸壁の構造、腫瘤、リンパ節の腫れなどを観察します。
- 内視鏡下生検:全身麻酔で腸の粘膜を採取し、病理組織検査へ提出することで確定診断に近づけます。
慢性的な下痢に潜む「がん(悪性腫瘍)」とは
ワンちゃん・ネコちゃんの慢性下痢の原因として、特に注意が必要な腫瘍は以下の2つです。
- リンパ腫
- 腸腺癌
これらの腫瘍は悪性度が高いタイプがあり致命的リスクがあります。また悪性腫瘍ではあるものの、しこりを形成しない場合もあり、画像検査で見逃されやすいという特徴があるため注意が必要です。
早期の専門的診断と、手術も含めた集学的治療が動物たちの苦痛を取り除き、その子たちと過ごす大切な時間を守るための鍵になります。
【危険なサイン】今すぐ受診を検討すべき5つの症状
下痢に加えて以下の症状が見られる場合は、緊急性が高い可能性があります。
- ぐったりして元気がない
- 嘔吐を繰り返す
- 食欲低下
- 血便 / 黒色の便
- 急な体重減少
これらがひとつでもあてはまる場合は、危険な病気の可能性があります。
さいごに
下痢はよくある症状ですが、その裏には 消化器の炎症・膵臓の病気・免疫の異常・そして腫瘍(がん) など様々な原因が潜んでいます。また原因が重大なものでなかったとしても、下痢は動物にとってもつらい症状ですし、ご家庭の負担も大きいものです。一緒に安心した生活を取り戻すために、気になる下痢が続く場合は早めの受診をおすすめします。
腫瘍に限らず、慢性腸症や膵臓の病気、食事相談などもクロス動物医療センターでお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。
クロス動物医療センターグループ
獣医腫瘍科認定医II種 大山広朗