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2026.02.03
グループ藤沢院
腫瘍科

犬の皮膚のしこり〜その様子見が命取りに?早期診断が愛犬の命を守る鍵〜

#病気の解説

はじめに

愛犬の皮膚に突然しこりを見つけたら、不安になりますよね。

実は皮膚にできる“しこり”にはさまざまな原因があり、経過や重篤度も幅広いものがあります。ここでは、しこりの正体や検査方法、注意すべきサインなどを話していきます。

しこりの正体

しこりの原因は大きく分けて2つあります。

1. 非腫瘍性のもの

    • 皮膚炎によるかさぶた
    • 肉芽腫(感染性・非感染性を含む)
    • 表皮嚢胞(皮脂や角質の詰まり)など

     2. 腫瘍性のもの

    • 良性腫瘍
    • 悪性腫瘍(がん)

    非腫瘍性のしこりには、皮脂詰まりのような比較的軽度なものから、自己免疫疾患のような重篤化して全身に影響を及ぼすものまで幅があります。腫瘍性のものも同様で、良性のものから悪性腫瘍(がん)まで多様です。
    2008〜2017年の報告では、犬の皮膚腫瘍1,435例のうち約57%が悪性腫瘍だったというデータもあります。(Mun Keong KOK et al.2019)

    いずれにしても、しこりがあった場合は安全とは言い切れないということがポイントです。

    しこりの正体を調べる方法

    まずはご家族が気づけるポイントとして、

    1. 硬さ
    2. 毛の有無
    3. 境界の明瞭さ

    といった特徴がありますが、それだけでしこりの正体を判断することはできません。見た目が穏やかでも悪性腫瘍の場合も決して珍しくはありません。
    診断には病理検査がとても重要です。

    病理検査には

    1. 細胞診
      しこりに針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で観察します。
    2. 組織診
      手術で腫瘍の一部または全部を摘出して詳細に評価します。

    この2つの検査があります。これらを組み合わせて、ようやく正確な診断につながります。

    見逃してはいけないサインと注意点

    特に次のようなしこりは注意が必要です。

    • 数ヶ月程度の短期間で急に大きくなる
    • 表面から出血する
    • 触ると痛がる
    • いびつな形で硬い

    これらは悪性腫瘍の可能性が高くなります。

    また重要な点として、上記の特徴に当てはまらない悪性腫瘍や重篤な疾患も存在するということです。

    具体的な皮膚腫瘍

    軟部組織肉腫(悪性)

    筋肉や血管、神経などから発生する腫瘍です。局所で広がり再発しやすく、悪性度に幅があります。場合によっては手術に加え放射線や化学療法を行うこともあります。

    肥満細胞腫(悪性)

    アレルギーや免疫に関わる肥満細胞由来の腫瘍です。悪性度が高い場合は肝臓や脾臓などへ転移することがあります。悪性度が低ければ手術のみで治ることもありますが、進行例では集学的な治療が必要になる場合があります。

    脂肪腫(良性)

    脂肪細胞由来で柔らかいことが多い腫瘍です。自然に縮小することもありますが、大きくなると生活に支障が出る場合は手術を検討します。

    組織球腫(良性)

    皮膚の免疫に関わるランゲルハンス細胞由来で若い犬に多い腫瘍です。赤く無毛のしこりとして見られ、多くは自然に退縮します。

    形質細胞腫(主に良性)

    白血球の一種である形質細胞由来の腫瘍です。皮膚のみの場合は手術で治りますが、まれに内臓由来の悪性転移で現れることもあるため全身の評価が必要です。

    皮脂腺腫(良性)

    皮脂腺が増殖する腫瘍です。小さなカリフラワー状やドーム状などのしこりとして見つかることが多く、希望に応じて手術で取り除きます。

    ここに挙げた以外にもさまざまな皮膚腫瘍が存在します。

    さいごに

    愛犬にしこりを見つけたときは、適切な検査を行うことがとても大切です。触った印象だけでは判断できないケースも多く、早い段階での評価がその子のより良い未来への選択につながります。しこりに関するご相談は、どうぞクロス動物医療センター藤沢までお越しください。

    クロス動物医療センターグループ 獣医腫瘍科認定医II種 大山広朗