病気のコラム
動物のがん治療が目指すものとは
はじめに

皆様、はじめまして。獣医師の大山広朗(ひろあき)と申します。
当院にて、腫瘍科診療を担当しております。私のがんに対する治療への思いやがんの治療の概要を知っていただきたくこの場を設けさせていただきました。最後まで読んでいただけると嬉しいです。
がんを治療するにあたって
がんという病気は、「完治しない」「命を脅かすもの」というイメージが強く、診断を受けた瞬間、多くの飼い主さまが「もうだめなのではないか」「これからは苦しい時間しか残されていないのではないか」「治療をすること自体が可哀想なのではないか」と、深い不安に包まれます。
動物たちは私たち人間よりもこの世に生を受けている時間は短く、私たちよりも早く旅立っていきます。そしてその限られた時間の中で、がんという病気は確かに苦しく、厳しいものかもしれません。そして、完治できないことも少なくありません。
それでもなお、がん治療には意味があると、私は信じています。
動物のがん治療における大原則は、「今ある苦痛を取り除くこと、そしてこれから起こりうる苦痛をできる限り避けること」です。
その結果として、飼い主さまと動物が共に過ごす時間が穏やかに、少しでも長く続くことを目指します。
生存期間をただ延ばすことだけが、治療の目的ではありません。
実際に、診断から数か月しか生きることができなかった子たちも、私は数多く診てきました。それでも、飼い主さまと何度も話し合い、その子に合った治療を選び、痛みや苦しさを和らげながら共に過ごした時間は、数年であっても、数か月であっても、あるいは数日であっても、かけがえのない時間に
なります。
その時間の中で、飼い主さまはこれまで以上に愛情を注ぎ、動物たちはこれまで以上に飼い主さまを必要とし、強い信頼で応えてくれます。
私は、そのかけがえのない時間を支えるために、腫瘍科診療を行っています。
どのような治療選択があるのか
がん治療の基本は、主に以下の3つです。
- 手術
がんを摘出することで、痛みや臓器への負担を取り除きます。全身麻酔が必要となります。 - 放射線治療
体を切らずにがんを縮小させる治療です。こちらも全身麻酔が必要となります。 - 化学療法
お薬によってがんを抑え、苦痛を軽減します。麻酔は不要で、従来の抗がん剤に加え、副作用の少ない分子標的薬も使用しています。
当院では、エビデンスを大切にしながらも、がんの種類だけでなく、動物たちの年齢や性格、生活環境、そしてご家族の気持ちを踏まえたオーダーメイドの治療選択を行います。
また、これらの積極的治療の有無に関わらず、痛みや不快感を和らげることを目的とした対症療法・緩和ケアも積極的に行っています。
さいごに
動物たちと共に暮らし、幸せな時間を過ごすこと。
その時間が、最期の瞬間まで続くように、私たちは尽力します。
積極的な治療を行う場合も、行わない場合も、ご自宅での過ごし方や心の向き合い方を含めて、家族にとって最善の選択ができるよう、いつでもクロス動物医療センターにご相談ください。
クロス動物医療センターグループ 獣医腫瘍科認定医II種 大山広朗