病気のコラム
がんってなんでできるの?〜がんの発生メカニズムを紐解く〜
はじめに
「がんの原因って何だったんだろう」「もっと早く気づけたのではないか」「自分のせいではなかったのか」診察室で、こうした言葉を耳にすることがあります。
大切な家族が“がん”と診断されたとき、多くの方が原因を探し始めます。けれど実際のところ、なぜがんができるのかという仕組みは、あまり詳しく説明されることがありません。
そのメカニズムはとても複雑で、今もなお研究が続けられています。今回は、できるだけわかりやすく整理してみたいと思います。
がんが発生するまで
私たちの体は、無数の「細胞」からできています。生きている限り、細胞は分裂して新しく生まれ変わり、古い細胞は役目を終えていきます。この入れ替わりは厳密にコントロールされていて、必要な分だけ、秩序を保ちながら増えるようにできています。
ところが、遺伝子(DNAなど)やその調整機構に異常が起こると、この秩序が崩れます。すると、本来よりも過剰に細胞が分裂するようになります。しかし体も黙っていません。異常を修復しようとしたり、異常な細胞を排除したりして、必死にバランスを保とうとします。異常が軽ければ、元に戻ります。少し上回ると、良性腫瘍になります。さらに異常が積み重なり、体の修復機能を超えてしまったとき、制御不能な増殖を起こす悪性腫瘍、つまり“がん”へと進んでいきます。
がんは、ある日突然現れるものではなく、静かに段階を踏んで進んでいくと考えられています。
がんの原因
では、その遺伝子変異を引き起こす要因は何でしょうか。発がん性との関連が明確なものとしては以下が挙げられます。
- タバコ煙:受動喫煙でも発がんリスクは上昇します。
- 除草剤:長期的な曝露がリスク因子となります。
- 紫外線:DNAに直接損傷を与え、特に皮膚腫瘍の発生に関与します。白色被毛の猫では注意が必要です。
- アスベスト:現在では曝露機会は減少しています。
ただし、これらの環境因子がなくてもがんは発生します。
犬種特異的な遺伝背景、加齢によるDNA損傷の蓄積、免疫機能の低下など、内因性の要素も大きく関与します。特に加齢は最大のリスク因子の一つとされています。
つまり、がんは「単一の原因」で説明できる病気ではなく、遺伝的素因と環境要因が複雑に絡み合った結果として生じる疾患なのです。
さいごに
できることがあるならしたい。守れるものは守りたい。それは当然の気持ちです。
禁煙や拾い食いの防止など、日常でリスクを減らすことは決して無駄ではありません。けれど、それでもがんができてしまうことはあります。だからこそ大切なのは、早く気づくことです。
- 小さなしこり
- 少しの元気の低下
- なんとなくの違和感
その「なんとなく」が、未来を変えることがあります。がんに限らず、どんな病気も早期発見・早期治療が選択肢を広げます。気になることがあれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。「来てよかった」と思っていただけるよう、クロス動物医療センター藤沢はその一歩を全力で支えます。
クロス動物医療センターグループ 獣医腫瘍科認定医II種 大山広朗