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2026.04.13
グループ藤沢院
腫瘍科

【獣医師解説】病理検査結果の読み方|難しい専門用語の意味を紐解く

#病気の解説

はじめに

以前のコラムで、病理検査における細胞診と組織診についてお話ししました。しかし実際に結果用紙を受け取っても、そこに並ぶ専門用語の多さに戸惑われる方も多いのではないでしょうか。

病理診断書は、基本的に担当獣医師へ向けて記載されているため、どうしても専門的な表現が中心になります。そこで今回は、病理結果に書かれている言葉の意味を少しずつ紐解いていきたいと思います。

専門用語

DNAやRNAといった遺伝情報を含む部分で、細胞の“設計図”が集まっている場所です。

核小体

核の中にある丸い構造で、細胞の活動や分裂に関わる重要な部分です。

細胞質

細胞のうち、核以外の領域を指します。

上皮性細胞

細胞同士が規則正しく接着し、シート状に並んでいる状態を示します。

独立円形細胞

上皮性とは異なり、細胞が一つ一つバラバラに散らばって存在している状態を示します。

好酸性

顕微鏡で観察した際に、赤く染まって見えることを指します。

好塩基性

青く染まって見えることを指します。

分化

分化とは、細胞の成熟度を示す言葉です。正常な細胞は十分に成熟したうえで、必要な範囲内でのみ分裂を行います。一方、がん細胞では成熟の過程が乱れ、未熟なまま過度な増殖を繰り返します。

病理学的には
・高分化(成熟度が高い)
・中分化
・低分化
・未分化(成熟度が乏しい)

と分類されます。一般に、低分化・未分化な腫瘍ほど悪性度が高い傾向があります。

異型性

細胞の見た目が、正常な状態からどの程度逸脱しているかを示す指標です。

腫瘍である場合、異型性の強さは悪性度と関連します。

評価のポイント

異型性を評価する際には、主に以下の点を観察します。

  • 細胞の大きさのばらつき
  • 核の大きさのばらつき
  • 核と細胞質の大きさの比率
  • 核の染色の濃さ
  • 核小体の大きさや数

などの変化が強いほど、悪性度が高い可能性が示唆されます。

有糸分裂像

細胞が実際に分裂している状態を指します。がん細胞は増殖速度が速いことが多いため、悪性度が高い腫瘍では有糸分裂像が多く観察されます。

転移

がん細胞が元の場所から離れ、別の臓器へ広がることを指します。

浸潤

がんが連続して周囲の組織へ広がっていく状態です。

脈管浸潤

リンパ管や血管といった管状構造の中にがん細胞が入り込んでいる状態を指します。これは将来的な転移の可能性を示唆する所見のひとつです。

がんのグレード(悪性度)を評価するポイント

グレードの評価には主に下記のような点を確認します。

  • 異型性
  • 有糸分裂像

ステージ(進行度)を評価するポイント

ステージの評価には主に下記のような点を確認します。

  • 浸潤
  • 転移の有無

さいごに

病理結果の用紙には、専門的な言葉が並び、「悪性」「がん」といった表現に強い衝撃を受けることも少なくありません。

しかし、そこに記されているのは、今その子の体の中で起きている“事実”です。

現状を正確に知ることは、決して怖いことではなく、次の一歩を決めるための大切な材料になります。

私たちは、その内容をできる限りわかりやすく、そして誤解なくお伝えする責任があると考えています。今回のコラムが、病理結果を読む際の小さな道しるべとなれば幸いです。

わからないことがあればクロス動物医療センター藤沢に是非ご相談ください。

クロス動物医療センターグループ 獣医腫瘍科認定医II種 大山広朗