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2026.03.16
グループ藤沢院
腫瘍科

犬と猫の放射線治療|手術をしない「切らないがん治療」という選択肢

#病気の解説

はじめに

「手術で取るのは難しい」「これ以上の手術は負担が大きすぎる」
そのような状況で、がん治療を諦めかけてはいませんか?

放射線治療は、大学病院などの限られた施設にのみ設置されている高度な治療ですが、実はがん治療において非常に強力な「切らない選択肢」となります。今回は、放射線治療の仕組みと、その可能性について解説します。

まずは放射線について解説

「放射線」と聞くと、不安を感じる方も多いかもしれません。また、「放射能」と混同されることも少なくありません。放射能とは、放射線を出す能力を持った物質のことです。放射線とは、エネルギーを持った電磁波や粒子のことを指します。放射線にはさまざまな種類があり、体にほとんど影響しないものから、強い影響を及ぼすものまであります。

実は、放射線は私たちの身の回りにも存在しています。例えば、食べ物に含まれるカリウムからも微量の放射線は出ていますし、飛行機に乗ると地上よりも多くの放射線を浴びます。

つまり、放射線は決して特別なものではなく、私たちの生活と無縁ではない存在なのです。

放射線治療の仕組み:なぜ「がん」に効くのか?

放射線治療は、エネルギーを持った電磁波や粒子を照射し、がん細胞の設計図(DNA)を直接傷つけることで増殖を抑える治療です。

「被ばくが怖い」というイメージがあるかもしれませんが、放射線は私たちの身の回り(食べ物や空の上)にも微量に存在しているものです。治療では「がん細胞を叩きつつ、正常な細胞をいかに守るか」という緻密な計算に基づき、安全性を確保しながら進められます。

目的別・2つの照射方法

照射の際は、体への影響を最小限に抑えるために、以下の工夫がされています。

  1. 全身麻酔下で正確に照射し、不要な部位への照射を防ぐ
  2. 複数回に分けて照射する(分割照射)ことで正常組織を守る

また、体への負担と効果のバランスを考え、以下の2つの方法から選択します。

照射方法目的特徴
根治的照射がん細胞をより強力に制御する1回あたりのエネルギーを抑え、その代わりに十数回程度に分けて照射する方法です。麻酔回数の増加や急性の皮膚障害などが生じやすくなりますが、将来的な治療関連発がんや遺伝子異常は起こりにくくなります。そして総合的ながん細胞へのダメージを高めることができます。
緩和的照射痛みや苦痛の緩和1回あたりのエネルギーを高めに設定し、照射回数は 数回に抑える方法です。
麻酔回数は少なく済みますが、将来的な治療関連発がんや遺伝子異常などが生じやすい傾向があります。腫瘍が大きく縮小しなくても、止血や痛みの軽減といった効果が期待できる場合があります。

放射線治療が選ばれる「4つのケース」

「手術ができない=何もできない」ではありません。放射線は、そのような状況でも力を発揮できる治療法です。

  1. 切除困難な部位のがん:鼻の中、脳、神経の近くなど、メスが入れにくい場所。
  2. 巨大な腫瘍の縮小:手術前に小さくして、摘出の成功率を高める。
  3. 再発の予防:手術で取り切れなかった微細ながん細胞を叩く。
  4. 痛み・出血のコントロール:体力的に手術が難しい子の苦痛を取り除く。

さいごに

すべてのがんに放射線治療が適応になるわけではありません。また、複数回の麻酔が必要になる点に不安を感じる方もいらっしゃると思います。
しかし、手術のような大きな侵襲はなく、処置時間も大手術のような長時間には及びません。適切な症例では、そのデメリットを上回るメリットが期待できます。「切らない」という選択肢があることを、ぜひ知っていただきたいのです。愛するご家族の痛みを和らげる方法があるかもしれません。
治療の可能性を広げるためにも、どうか一度ご相談ください。クロス動物医療センター藤沢では、放射線治療が可能な専門施設と連携し、適切なご紹介を行っております。最善の選択を一緒に考えていきましょう。

クロス動物医療センターグループ
獣医腫瘍科認定医II種 大山広朗