犬の肥満細胞種とは?
肥満細胞腫は、犬の皮膚や皮下に多くみられる悪性の腫瘍で、悪性の皮膚がんの中では最も多いものです。
体の中の肥満細胞という細胞が腫瘍化してどんどん増殖し、皮膚や皮下にできものを形成し、リンパ節や全身にも転移してしまう怖い病気です。
肥満細胞には、炎症を起こすヒスタミンと呼ばれる物質がたくさん蓄えられており、いわゆる太っている「肥満」とは関係ありません。
この肥満細胞が異常な働きをし、ヒスタミンを放出することにより、皮膚を赤くしたり、胃腸の炎症を起こしたりします。
肥満細胞腫の見た目はイボのようなものだったり、脂肪の塊のようだったり、皮膚炎のように赤くなったりと様々で、見た目から判断することは難しく、小さいイボだからといって安心はできません。
犬の肥満細胞種の種類
同じ肥満細胞腫でも、手術で完治が見込める悪性度の低いものから、急激に進行し完治が難しい悪性度の高いものまであり、腫瘍の悪性度により治療法もさまざまです。
悪性の度合い「グレード」は主に1〜3の3つのグレードに分かれます。
グレードが上がるに連れて悪性度が上がり、グレード3になると進行が早く、すでにリンパ節や脾臓・肝臓などへの転移が進み、治すことが非常に難しい場合もあります。
犬の肥満細胞種の診断
グレードを見極めるためには、まず細胞診を用います。
細胞診とは細い針を用い、細胞を採取する検査で痛みをほとんど伴わずに麻酔なしで簡単に実施できます。
それに加え、転移しているかどうか・手術するかどうかを判断するために、レントゲン検査や超音波検査、CT検査を行うこともあります。
CT検査を行う場合は麻酔が必要になり、血液検査も実施します。
ただ、正確なグレードは、摘出した腫瘍組織の病理検査で判断しますので、実際に手術をした後になります。また、正しい判断のためには、腫瘍がいつからどれくらいの速さで成長しているのかなど、飼い主様からの情報も重要です。
犬の肥満細胞種の治療
肥満細胞腫の治療は、グレードや進行具合によって外科手術、放射線療法、内科的治療の中から最も適切なものを組み合わせます。
外科手術
まだ転移していない肥満細胞腫の多くは適切な外科手術で根治できます。
ただし、グレードが2以上の肥満細胞腫は、腫瘍細胞が周囲の組織に浸潤しているため、腫瘍の周囲 2~3cmの正常組織をつけた状態で腫瘍を摘出する必要があります。
放射線治療
外科手術だけでは腫瘍が完全に取り切れない場合には、残存した腫瘍細胞を根絶するために放射線療法を用います。
放射線療法とは、強力なX線で体の中の腫瘍細胞を殺傷する治療法で、正常細胞と腫瘍細胞のX線に対する感受性の違いを利用した治療です。
肥満細胞腫は放射線感受性が高く、正常細胞が耐えられる程度のX線で死滅します。
放射線治療には根治を目指す根治的放射線治療と緩和を目指す緩和的放射線治療の2種類があり、後者に関しては腫瘍に対する効果は劣りますが、すでに転移してしまった症例などで、局所治療の負担や治療費を軽減する目的で用いられることがあります。
内科治療
内科療法は注射薬や飲み薬によって治療する方法で、肥満細胞腫が全身に転移してしまっている場合などで用います。
上記の外科手術と放射線療法と違い、 局所での効果は外科手術や放射線治療ほど高くありません。
ステロイドホルモン剤、抗がん剤、分子標的薬などが主に用いられます。
肥満細胞腫は見つかった時点から早急な治療が求められます。愛犬の様子を定期的にチェックし、しこりが気になった場合はなるべく早めにご相談下さい。