病気のコラム
2026.02.25
グループ藤沢院
腫瘍科
犬・猫の「病理検査」とは?|細胞診と組織診の違い、しこりの正体を知るための真髄
#病気の解説
はじめに
身体検査や画像検査で「しこり」が見つかったとき、それが本当に腫瘍(がん)なのか、それとも良性のデキモノなのかを100%判断できるのは、顕微鏡を用いた「病理検査」だけです。
「様子を見ましょう」と放置して手遅れになる前に、診断の要となるこの検査について正しく理解しておきましょう。
病理検査の2つのステップ
病理検査は、アプローチの仕方によって大きく2種類に分けられます。
1. 細胞診(さいぼうしん):まずは手軽に調べる
しこりに細い針を刺すなどして、腫瘍を構成する細胞そのものを採取します。
採取した細胞をスライドガラス上に薄く広げ、細胞の形や種類などを顕微鏡で観察します。
- メリット: 比較的簡便で、多くの場合麻酔なしで実施可能です。
- わかること: 「どの系統の細胞か」「がん化の兆候があるか」をスピーディーに推測できます。
細胞診の主な方法
- 穿刺細胞診:しこりに針を刺し、針穴に細胞を採取します。
- 吸引細胞診:カテーテルを用いて、病変に陰圧をかけることで細胞を吸引します。
- スタンプ細胞診:腫瘍表面や切開面をスライドガラスに押し当て、細胞を写し取ります。
2. 組織診(そしきしん):詳しく確定させる
腫瘍の一部(または全部)を「組織の塊」として採取し、より詳しく観察します。非常に薄く切り出した後、特殊な染色を行い、顕微鏡で観察する検査です。
- メリット: 細胞の並び方や、周囲への広がり方を評価でき、確定診断につながります。
- わかること: 腫瘍の正確な種類や悪性度(グレード)、手術で取り切れるかどうかが分かります。
組織診の主な方法
- 切除生検:腫瘍をすべて摘出し、その全体を用いて行う組織診です。
- 部分生検:腫瘍の一部を切り出して行う組織診です。診断目的で実施されることがあります。
【例え話】細胞診と組織診の違いとは?
この2つの違いを、一軒の「家」に例えてみましょう。
- 細胞診は「木材」を見る検査数本の木材を見れば、それが「スギ」か「ヒノキ」かは分かります。しかし、それだけでは「どんな構造の家か」までは分かりません。
- 組織診は「家の設計図」を見る検査木材がどう組み合わされ、どのような構造で建っているのか、全体像を把握します。
腫瘍診断も同じです。「細胞(木材)」だけを見るのではなく、「組織(設計図)」まで確認することで、初めて正しい治療戦略が立てられるのです。
検査方法の比較一覧
| 検査名 | 体への負担 | 麻酔の必要性 | 診断の正確さ |
| 細胞診 | 低い(針を刺す程度) | 原則なし | 推測・スクリーニング |
| 組織診 | 中〜高(一部切除など) | 必要(局所または全身) | 確定診断 |
さいごに
このように、腫瘍の診断において病理検査は原則として不可欠な検査です。見た目や触り心地だけで判断してしまうと、その先に、動物たちが苦しむ未来が待っているかもしれません。しこりを見つけた際は、「様子を見る」前に、ぜひ一度ご相談ください。
検査を行うべきか迷っている場合や、病理検査に不安がある場合も、どうぞお気軽にクロス医療センターへご相談ください。
クロス動物医療センターグループ
獣医腫瘍科認定医II種 大山広朗