症例・治療報告
葛西院
整形外科
猫の包皮筒利用会陰尿道ろう設置術
※手術画像の掲載に関するご注意
本記事には、治療内容を正確に解説するため、手術中の患部写真を掲載しております。血液や切開を伴う画像が含まれますので、苦手な方は閲覧にご注意ください。
猫の包皮筒利用会陰尿道ろう設置術の患者様情報
5歳、サイベリアン、4.8kg、去勢済み猫
主訴
尿がポタポタしかでない。何度もトイレに行く
尿道閉塞とは
機能的要因(尿道痙攣、反射性筋失調など)あるいは解剖学的要因(尿石症、肉芽腫性尿道炎、腫瘍、繰り返しのカテーテル操作による尿道狭窄など)により排尿困難を示します。
症状として乏尿、または無尿を伴い、頻尿、(有痛)排尿困難、またはその両方を引き起こします。また、排尿ができないため急性腎障害や高カリウム血症により命に関わることも多く、非常に緊急性の高い疾患です。
尿道閉塞解除時の所見
触診、膀胱エコーにより重度に拡大した膀胱を認めました。
鎮静下で3Frカテーテルにて閉塞を解除し排尿を認めたがカテーテルが尿道を押し広げながら入る感触があり、尿道先端は非常に狭窄していました。
また、本症例ではBUN>130mg/dl Cre11.7 K>10.0と非常に高値であり急性腎障害と高カリウム血症を続発していました。閉塞を解除している間に心停止のリスクがあったためカルチコールにてカリウムをコントロールしました。
尿道閉塞の内科治療
尿道閉塞ではまず閉塞を解除することが最優先です。カテーテルを用いて尿道閉塞を解除し、その後原因疾患に対しての治療(尿石症なら食事管理、特発性膀胱炎などによる尿道栓子であれば生活指導など)を行います。
尿道閉塞により急性腎障害や高カリウム血症などが続発している場合には、点滴や血圧管理、尿量のモニタリングや各種薬剤により治療します。
尿道閉塞の外科治療
尿道閉塞に対して非外科処置で閉塞を解除できない場合や尿道狭窄がある場合は外科的な治療が必要になります。
従来の会陰尿道ろう設置術
陰茎や包皮を切除し尿道粘膜を皮膚に縫い付ける手術です。外見状は女の子の猫ちゃんのようになります。ただし、皮膚の尿焼け、尿道開口部の狭窄のリスクや、包皮や陰嚢がなくなるため物理的な障壁がなくなり、肛門から細菌が入ってしまい細菌性膀胱炎のリスクが高まります。
猫の包皮筒利用会陰尿道ろう設置術
当院では比較的新しく報告されている包皮を切除せずに残す術式を採用しています。この術式は陰茎の尿道の細い部分を切除し、尿道粘膜と包皮粘膜を吻合する手術となります
この場合肛門と尿道が包皮により隔てられるため細菌感染のリスクはほとんど正常な子と代わりありません。また外見上もほとんど変化がありません。
また、尿道粘膜は包皮粘膜と縫合されるため尿道開口部の狭窄のリスクも従来の方法と比べて大きく改善されています。



術後管理
術創の腫れが引く3~5日程度は尿道にカテーテルを留置し管理いたします。
その後10~14日後に縫合を抜糸し治療終了となります。
尿道は1mmちょっと程度の太さから3mm程度の太さになりますので多少の結石は排出されますが、大きな結石の場合はどうしても再度閉塞の原因となる場合があるので飲水量を増やしたり、結石をできにくくするお食事などを使用して管理して行きます。
予後
本症例は急性腎障害や高カリウム血症は内科治療によりコントロール可能であり、術後の再狭窄·再閉塞なども認められませんでした。食事管理を加え、良好な予後が期待されます。
- 担当獣医師 森亮磨 担当スタッフ 江副裕香