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2026.06.01
港南台院
整形外科

【港南台】犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)とは|飼い主さんが知っておきたい症状・グレード別の治療を獣医師が解説

#病気の解説

「最近、愛犬がスキップのような歩き方をする」「突然キャンと鳴いて片足を上げた」

――そんな様子に気づいて、不安な気持ちでこのページを開かれた飼い主さんへ。考えられる原因のひとつに「膝蓋骨脱臼(パテラ)」という、ひざのお皿がずれてしまう病気があります。

「パテラと言われたら、すぐに手術が必要なのでは?」とご不安に感じる飼い主さんも多いのですが、実際にはお薬と日常のケアで付き合っていけるケースもたくさんあります。 

この記事では、パテラとはどんな病気か、症状の重さによってどんな治療を選ぶのかを、横浜市栄区桂台にあるクロス動物医療センター港南台 の獣医師が、やさしくお伝えします。

膝蓋骨脱臼(パテラ)とは

膝蓋骨脱臼は、犬にとても多い病気のひとつで、「パテラ」とも呼ばれます。「パテラ」は、ひざのお皿(膝蓋骨)の英語の名前です。

ひざのお皿は普段、太ももの骨にある窪みの中におさまっていて、ひざをスムーズに動かす役割をしています。何らかの理由でこのお皿がくぼみから外れてしまう状態が、膝蓋骨脱臼です。日本でよく飼われている小型犬では、お皿が内側にずれるタイプが圧倒的に多く見られます。

なぜ起きるのか

原因は未だによく分かっていない点が多いのですが、

  1. 先天的・発育的な要因
  2. 外傷などによる後天的な要因

に大きく分けられます。

どんな犬に多いか

一般的によく見られるのは内側に外れる膝蓋骨(しつがいこつ)内方脱臼です。

ヨークシャーテリア、チワワ、トイ・プードル、ポメラニアン、マルチーズなどの小型犬や、柴犬に多くみられます。実際、港南台院近隣にお住まいの飼い主さんからも、これらの犬種のひざについてご相談いただくことが多くあります。 

反対側(外側)にずれるタイプは、ラブラドールレトリバーなどの大型犬やミニチュアダックスフンドにまれにみられます。

飼い主さんが気づくサイン

意外に思われるかもしれませんが、パテラのいちばん多い症状は「症状がないこと」です。健康診断のときに偶然見つかることも少なくありません。

それでも症状がある場合は、次のようなサインで気づかれることが多いです。

  • 散歩中に、ふっと後ろ足を持ち上げる
  • スキップのような歩き方をする
  • 「キャン」と鳴いて痛がる
  • 後ろ足を引きずる、ケンケンする
  • 触ろうとすると嫌がる

特徴的なのは、朝の散歩では足を上げていても、夕方の散歩では普通に歩いているといったように、症状が出たり消えたりすること。これは、外れたひざのお皿が自然と元の位置に戻ることがあるためです。気になるサインがあれば、ぜひ一度動物病院にご相談ください。

重症度(グレード)1〜4の分け方

パテラは、症状の重さによって4つのグレードに分けられます。グレードによって治療の進め方が大きく変わるため、まずは正しいグレードを知ることがとても大切です。グレード別の散歩の目安も併せてお伝えします。

グレード説明
グレード1普段はひざのお皿が正しい位置にある。何かのはずみで外れても、自然に元に戻る。散歩は普段通りで問題ないことが多い。
グレード2ときどき外れることがあり、手で押せば元に戻せる。激しい運動・ジャンプは控えめに、平坦な道での散歩がおすすめ。
グレード3いつも外れている状態。手で戻しても、すぐに再び外れてしまう。獣医師と相談しながら、短時間・平坦な道での散歩が基本。
グレード4常に外れていて、手で戻すこともできない。ひざの形が変わってしまうことも。運動の量と内容は個別にご相談ください。

ここでひとつ、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。グレード3まで進むと、かえって症状が落ち着いて見えることがあるのです。お皿が外れた位置で安定してしまうため、飼い主さんからは「あれ、最近大丈夫そう」と見えてしまうケースがあります。しかし実際には病気が進んでおり、ひざの軟骨がすり減ったり、ほかの靭帯を痛めたりするリスクも高まります。見た目が落ち着いて見えても、自己判断は禁物です。

病院での診断の流れ

診断は、まずひざを手で触ってチェックすることから始めます。ひざのお皿の位置や、力を加えたときに外れるかどうかを確認します。続いてレントゲン検査で骨の状態を見て、必要に応じてCT検査でひざの形を詳しく調べます。

パテラは症状がないことも多いため、歩き方がおかしいワンちゃんに対して、本当にパテラが原因なのかを丁寧に見極めることを大切にしています。

治療の選び方

治療は大きくお薬などで様子をみる治療と、手術による治療の2つに分かれます。「パテラ=必ず手術」というわけではなく、グレードや症状、年齢、ご家族のご希望をふまえて、相談しながら選んでいきます。

お薬などの治療は、痛みや炎症をおさえるお薬、ひざを守るサプリメント、体重管理、運動の制限などで、症状をコントロールしていく方法です。外れたお皿そのものを元に戻す治療ではありませんが、症状をやわらげながら付き合っていけるため、グレード1や、軽いグレード2のワンちゃんで選ばれることが多い方法です。

手術による治療は、ひざのお皿が外れにくくなるように骨の形を整える、根本から治す治療です。主にグレード3以上、または日常生活に明らかに支障が出ているケースで検討します。

手術について

主な手術は2種類あります。ひとつはひざの骨のくぼみを深くする手術、もうひとつは脛の骨のずれを整える手術です。状態に応じて、これらを組み合わせて行います。

入院日数はおおよそ4〜5日が目安ですが、ワンちゃんの性格に合わせて1〜2日でお返しすることもあります。

また、グレード4で太ももの骨やすねの骨そのものが変形している複雑なケースは、より高度な手術が必要になるため、信頼できる専門の動物病院にご紹介させていただくこともあります。当院では、ご家族と相談しながら、その子にとっていちばん良い治療を一緒に考えていきます。

予防と日常のケア

日常生活でできる予防と、悪化を防ぐためのポイントは次の通りです。

  • フローリングに滑り止めマットやカーペットを敷く(ひざにかかる負担をぐっと減らせます)
  • 適正体重を保つ(太らせない)
  • 段差の上り下り、ソファやベッドからのジャンプを避ける
  • 抱き上げるときは、ひざに無理がかからないよう後ろ足もしっかり支える
  • 「お姉さん座り」のように片足を投げ出した座り方が続いていないかチェック。
  • 子犬の頃から定期的に健康診断を受けて、早めに見つける。

特に小型犬を飼っていらっしゃる方は、子犬の頃からひざの状態を見ておくと安心です。

飼い主さんからよくあるご質問

Q. パテラと言われたら、必ず手術が必要ですか?

必ずしも手術ではありません。年齢、症状、ほかの病気の有無、ご家族のご希望をふまえて、総合的に考えていきます。内科療法で維持する場合も多数あります。

Q. グレード1ですが、様子を見ていて大丈夫でしょうか?

グレード1の場合、通常は症状がなければまずは経過観察が良いと思います。

定期的なワクチンや健診の時に進行がないかチェックしていきましょう。

Q. グレード3と言われましたが、普通に歩いているので大丈夫でしょうか?

ここは少し注意が必要です。先ほどお伝えしたように、グレード3まで進むと、お皿が外れた位置で落ち着いてしまうため、見た目では症状が和らいで見えることがあります。けれど中では病気が進んでおり、軟骨がすり減ったり、ほかの靭帯を痛めたりするリスクが高まります。一度病院で診ていただくことをおすすめします。

Q. パテラの手術に、デメリットはありますか? 

すべてのワンちゃんに、最初から手術をおすすめするわけではありません。一般的に、麻酔にともなうリスク、術後にリハビリ期間が必要なこと、まれに再脱臼が起こる可能性があることなどが、考えておきたいポイントです。年齢や持病、ワンちゃんの性格によっても判断は変わります。メリットとデメリットの両面をお伝えしたうえで、ご家族とゆっくり相談しながら決めていきます。

まとめ

パテラ(膝蓋骨脱臼)は、グレードによって治療の進め方がまったく異なる病気です。「様子を見て大丈夫なケース」もあれば、「早めに手術を検討したほうがよいケース」もあり、見た目だけで判断するのは難しい病気です。

愛犬の歩き方に気になるサインがあれば、まずは正確なグレードを診てもらうことが、その子にとっていちばん良い選択への第一歩になります。

港南台駅・本郷台駅・大船駅エリアにお住まいの飼い主さんを中心に、クロス動物医療センター港南台では林獣医師がパテラをはじめとしたひざ・関節のご相談・治療を行っております。 「うちの子、もしかしてパテラかも?」と気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。

執筆:林 賢太郎 獣医師 / 横浜エリア統括獣医長(旧もも動物クリニック 院長)/ 横浜市栄区桂台中15-2 クロス動物医療センター港南台