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2026.02.24
グループ藤沢院
腫瘍科

犬・猫の抗がん剤治療(PART2)|薬剤別の副作用と「苦痛を最小限にする」対策

#病気の解説

はじめに

前回は、抗がん剤に共通する副作用について解説しました。

今回は一歩踏み込んで、実際の治療でよく使われるお薬ごとの「特有の副作用」と、当院で行っている「予防対策」についてお話しします。 「副作用を知ること」は、決して怖いことではありません。あらかじめ予測し、準備しておくことで、大切なご家族の負担を最小限に抑えることができるからです。

リンパ腫治療の標準「CHOPプロトコル」とは?

ワンちゃん・ネコちゃんのリンパ腫治療において、最も一般的で有効性が高いとされるのが「CHOP(チョップ)プロトコル」です。これは、性質の異なる4つの薬剤を組み合わせて行う治療法です。

  • C:シクロホスファミド
  • H:ドキソルビシン
  • O:ビンクリスチン
  • P:プレドニゾロン(ステロイド)

それぞれの薬には、注意すべき特有のサインがあります。

薬剤別の副作用と当院の予防策

薬剤名注意すべき副作用当院の予防・対策
シクロホスファミド出血性膀胱炎
尿に血が混じることがあります。
投与時に点滴や利尿剤を併用し、尿量を増やすことで代謝物を薄め、速やかな排泄を促します。
ドキソルビシン心毒性
心臓のポンプ機能に影響が出る場合があります。
定期的に心臓の超音波検査を行い機能を確認します。また、生涯投与限界量を設定し、安全域を守りながら治療を進めます。
ビンクリスチン末梢神経・消化管への影響
便秘や食欲不振が見られることがあります。
投与日から消化管の運動を助ける薬をあらかじめ使用し、副作用の発現をできるだけ抑えるよう努めます。

さいごに:「薬漬け」への不安を感じているご家族様へ

このようにさまざまな副作用が考えられる一方で、投与量や回数の調整、そして早めの予防的な治療介入によって、苦痛を最小限に抑えることは可能です。

一方で、たくさんのお薬を使うことに対して、「薬漬けになってしまうのではないか」と不安に感じられる方もいらっしゃると思います。そのお気持ちはとても自然なものです。
ですが私が考える「薬漬け」とは、本来必要ではない量や種類の投与があってこそ生まれる表現だと思っています。

「必要最低限で十分な治療を行い、薬とうまく付き合いながら生活の質を守っていくこと」

これこそが、動物医療における化学療法の真髄です。お薬は、決して苦しめるためのものではなく、より快適で穏やかな時間を過ごすための「パートナー」です。
不安や迷いがあるときは、一人で抱え込まず、いつでもクロス動物医療センター藤沢へご相談ください。

クロス動物医療センターグループ
獣医腫瘍科認定医II種 大山広朗