症例・治療報告
葛西院
整形外科
Leg-Calve-Perthes病(大腿骨頭壊死症)
※手術画像の掲載に関するご注意
本記事には、治療内容を正確に解説するため、手術中の患部写真を掲載しております。血液や切開を伴う画像が含まれますので、苦手な方は閲覧にご注意ください。
患者様情報
1歳、チワワMix、2.0kg、去勢雄
主訴
1ヶ月程度前からの静止時左後肢挙上を主訴に当院受診。
Leg-Calve-Perthes病とは
病因は大腿骨頭の虚血性壊死とされており原因は確実には解明していないが遺伝的な原因、常染色体上の劣性遺伝子の同型接合性などが報告されています。
小型および超小型犬(ヨークシャ・テリア、トイ・プードル、パグ、ミニチュア・ダックスフンド、テリア系など)での発生が多く雌雄差は認められていません。(ヨークシャ・テリアのみ雄>雌の報告あり)
片側性の発生が多く、両側性での発生率は10〜16.5%と報告されています。発症時期は3〜13ヶ月齢で最も発症が多いのは5〜8ヶ月齢です。
Leg-Calve-Perthes病の原因・症状
徐々に後肢の跛行~完全挙上が認められる。(骨溶解部の骨折が起こった場合には急激な跛行が認められることもある)股関節の伸展・外転時に痛みが認められることが多く、疼痛による不使用に伴い臀筋群や大腿四頭筋の萎縮が認められる。
Leg-Calve-Perthes病の診断
整形学的検査所見
歩様検査では左後肢の完全挙上が認められました。左大腿部周囲筋肉の萎縮および、左股関節の伸展、外転痛を認めました。
X線検査所見
左大腿骨頭の扁平化、透過性亢進、骨頚部の肥厚が認められ、Leg-Calve-Perthes病と診断しました。


Leg-Calve-Perthes病の内科治療
保存療法として安静と痛み止めの使用が検討されます。予後は2〜3ヶ月の治療期間で6〜47%で良好に改善の報告ですが、改善率の低さが課題となります。
Leg-Calve-Perthes病の外科治療
人工股関節全置換術
変形した大腿骨頭と寛骨臼側を、金属とインプラントに置換し、疼痛の軽減と関節機能の再建を目指す術式です。体重の重い症例やアジリティドッグなどでより完璧な機能の改善を目指す場合に検討されます。
より良い機能の改善が期待される一方で人工股関節の脱臼、感染、インプラントの緩み、破損、周囲骨折などの合併症リスクがあります。
また、国内で実施される施設が限られることが課題となります。
大腿骨頭切除関節形成術
大腿骨の転子窩から小転子までの骨頭を切除する術式です。股関節形成不全、Leg-Calve-Perthes病、骨頭骨折、股関節脱臼などによって著しい疼痛を示す骨頭を切除し痛みを改善させ機能回復を目指します。
切除後は周囲に結合組織が増生し関節構造を形成することで機能します。
予後は体重の軽い症例で良好であり、22kg以下の犬に適応とされることが多いです。
文献上オーナーの96%が術後の歩行に満足しており、整形外科専門医による歩行検査で速歩時に多少の跛行が出る可能性はあるものの日常生活には支障なしと評価されている報告があります。
(Excision arthroplasty of the hip joint in dog and cats:Clinical,radiographic,andgait analysis findings from the Department of Surgery,Veterinary Faculty of the Ludwig-Maximilians-University of Munich,Germany)
日常生活レベル以上の完全な機能回復、22kg以上の大型犬、内分泌疾患や老齢で結合組織増生の遅延が予想されるような症例で課題となります。
術中写真
サージカルソーによる大腿骨頭切除

切除後の関節包縫合

閉創後

切除した大腿骨頭

術後X線所見
大腿骨頭は完全に切除されており骨頚部の切り残しは認められません。
また、股関節の屈曲位においても切断端と骨盤の接触は認められません。切り残しがある場合、歩行時に骨盤に接触することで痛みにつながるため注意が必要です。


術後管理
術後の炎症期は症例の状態に応じて冷罨法、温罨法により疼痛・炎症の緩和に努めます。数日間は痛み止めの投薬を行い、安静は結合組織の増生が安定する2ヶ月を目安に実施いたします。
予後
着肢による歩行開始の平均はおよそ14日です。症例は体重が軽く、結合組織の増生に影響を及ぼす基礎疾患もないことから良好な予後が期待されます。
担当獣医師 森亮磨、鈴木聖弥 担当スタッフ 江副裕香