病気のコラム

HOME病気のコラム【港南台】犬のパテラ「グレード1」|自然に治る?散歩・日常生活で気をつけたいことを獣医師が解説
2026.06.30
港南台院
整形外科

【港南台】犬のパテラ「グレード1」|自然に治る?散歩・日常生活で気をつけたいことを獣医師が解説

#病気の解説

「ペットショップで愛犬がパテラのグレード1と言われた」
「健康診断でグレード1と告げられたけど、これってどのくらい大丈夫なの?」

――そんな不安なお気持ちでこのページを開かれた飼い主さんへ。
「グレード1なら自然に治る」と思っていらっしゃる方も多いのですが、実は少し誤解があります。

この記事では、犬のパテラ「グレード1」とはどんな状態なのか、本当に自然に治るのか、家庭でできるケアは何かを、横浜市栄区桂台にあるクロス動物医療センター港南台の獣医師が、やさしくお伝えします。 

なお、パテラ全体の症状や治療については、こちらの記事で解説しています。
(犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)とは|飼い主さんが知っておきたい症状・グレード別の治療を獣医師が解説)

膝蓋骨脱臼「グレード1」とはどんな状態か

膝蓋骨脱臼(パテラ)のグレード1は、4つあるグレードのなかでもっとも軽度に分類される状態です。

グレード1の状態では、膝蓋骨(ひざのお皿)は普段、太ももの骨にあるくぼみの中にきちんと納まっています。通常の歩行や運動の最中に脱臼することは基本的になく、ひざをまっすぐに伸ばして緩んだ状態のときに、内側に押してずらすことができる、というのがグレード1の特徴です。 

普段はひざのお皿が正しい位置に収まっているため、多くのワンちゃんは目立った症状を起こしません

グレード1の症状サイン

もっとも多い症状は「症状がないこと」です。グレード1のワンちゃんは飼い主さんが症状に気づいて来院されることは少なく、予防注射や健康診断のタイミングで偶然見つかるケースがほとんどです。 

それでも、日常の中で次のような様子が見られることがあります。

  • 普段の運動中にふっと後ろ足を持ち上げる
  • 一瞬スキップしたような歩き方をする
  • ただし長くは続かず、しばらくするとまた普通に歩き始める

これらは、運動の中で一時的にひざのお皿が外れた瞬間に起きる症状で、すぐに自然と元の位置に戻るため、長続きしないことが多いです。

「自然に治る?」よくある誤解 

「グレード1なら、そのうち自然に治るのでは?」とお考えの飼い主さんはとても多いのですが、ここにはやや誤解があります。

膝蓋骨脱臼の経過は、実はワンちゃんによって大きく異なります。とくに成長期の若い犬の場合、成長とともに骨の形成や軟部組織の発達が進むことで、ひざの構造が安定し、脱臼が起こりにくくなることがあります。これは前向きな経過です。 

一方で、膝蓋骨脱臼の遺伝的な素因を持っている子の場合、年齢とともに脱臼の程度が進み、症状がみられるようになることもあります。さらに、目に見える症状が現れなくても、ひざの中ではパテラが継続している、もしくは進行していることもよくあります。 

つまり、グレード1は「自然に良くなることもあれば、静かに進行することもある」状態です。だからこそ、症状がない段階でも定期的に診察を受け、そのときの状態に合わせた対応を考えていくことが大切になります。

グレード1のときに家庭で気をつけたいチェック

経過観察をしていくなかで、ご家庭で気にかけていただきたいサインがあります。

  • 散歩中に急にスキップするような歩き方をするようになっていないか
  • スキップ歩きが以前より頻繁になっていないか
  • 後ろ足を強く持ち上げて痛がるような場面がないか
  • 「お姉さん座り」のように片足を投げ出す座り方が増えていないか

特にスキップ歩きの頻度が増えてきた場合は、脱臼のグレードが進行している可能性が考えられます。 

また、まれにではありますが、何らかの強い負担がひざにかかったとき、ひざの周りの関節包や筋肉にダメージが加わって、痛みを伴った脱臼が起きることがあります。急に足を持ち上げて痛そうにするといった様子があれば、早めに動物病院にご相談ください。

グレード1の犬の散歩・運動

「グレード1と言われたけど、散歩はしていいの?」「ドッグランは行っても大丈夫?」――よくいただくご質問です。

結論からお伝えすると、何も症状がないグレード1のワンちゃんは、基本的に運動制限の必要はありません。むしろ適切な運動は、ひざ周りの筋肉や靭帯の形成を助け、ひざの安定にとってプラスになります。とくに若い子の場合、運動を制限しすぎることは逆効果になることもあります。 

おすすめは、人間のウォーキングくらいのペースで、平坦な道を歩かせてあげること。アスファルトよりも、近所の公園の土や草の上のほうが、ひざへの負担が少なく安心です。一方で、急な上り坂や登り階段は後ろ足に強い負荷がかかるため、なるべく避けてあげましょう。ボール投げやダッシュなどの激しい運動をさせたいときは、芝生のドッグランなど足に優しい場所がおすすめです。 

ただし、強めのスキップや、足を痛そうに持ち上げる症状が出たときは、症状が落ち着くまで安静にしてあげてください。

グレード1の犬の日常生活の注意点

ご家庭でできる、ひざに優しい環境づくりのポイントをまとめます。

  • 室内のフローリングは滑りやすく、ひざに負担がかかります。ワンちゃんがよく行動する場所だけでも、カーペットや滑り止めマットを敷くと、ひざへの負担をぐっと減らせます 
  • ソファやベッドからのジャンプは避ける(スロープを置くのもおすすめ)
  • 抱き上げるときは、ひざに無理がかからないよう後ろ足もしっかり支える
  • 「お姉さん座り」のように片足を投げ出した座り方が習慣化していないかチェック
  • 適正体重を保つことがとても大切です。特に避妊・去勢手術の後は体重が増えやすくなるので、食事の内容や量について見直していただくと安心です 

体重が増えると、それだけひざにかかる負担も大きくなります。数百グラムの違いでも、毎日のひざへの影響は変わります

ペットショップで「グレード1」と言われたら 

近年、ペットショップで子犬の購入を検討している段階で「この子はパテラのグレード1です」と告知されるケースが増えています。「ちゃんと迎えても大丈夫だろうか」「これからどうケアしていけばいいのか」と不安に感じられる方も多いのではないでしょうか。

まずお伝えしたいのは、グレード1の子犬であっても、適切な飼育環境を整えてあげれば、多くの場合は問題なく一緒に暮らしていくことができるということです。とくに成長期はひざの構造が安定していく時期でもあり、早い段階から正しい知識を持ってケアを始めることで、その子のひざを長く守ってあげることができます。

ただし、ペットショップでの告知はあくまで一次的な情報です。動物病院で改めて診せていただくことで、その子の現在の状態をていねいに評価し、年齢や生活環境に合わせた長期的なケアの方針を一緒に立てることができます。

子犬を迎えるかどうか迷っている」段階でのご相談も歓迎しております。お気軽に当院までお声がけください。

グレード1から進行させないためのケア

「グレード1のまま、できるだけ長く安定した状態を保ちたい」――そのために大切なポイントをまとめます。

  • 適正体重を保つ(最重要)
  • 室内に滑りにくい環境をつくる
  • 急激な運動・段差の上り下りを避ける
  • 子犬の頃から定期健診で経過を見て、進行のサインを早期に発見する

このような適切な運動と、ひざに負担をかけない環境を整えてあげることで、外傷をきっかけにした進行はある程度防ぐことができます。 

ただし、膝蓋骨脱臼の進行には遺伝的な要因も大きく関わるため、ケアを尽くしても進行してしまう子もいます。だからこそ、定期的に診察を受けてグレードと症状を観察しながら、その時々の最適な対応を考えていくことが、いちばん安心できる方法です。 

飼い主さんからよくあるご質問

Q. グレード1からグレード2に進むことはありますか?

あります。遺伝的な素因がある場合や、ひざに繰り返し負担がかかった場合などに、グレードが進行することがあります。だからこそ、症状がない時期も定期的な経過観察が大切です。

Q. グレード1のうちにサプリメントを始めたほうがいいですか?

まずは体重管理と日常環境の整えが最優先です。サプリメントはあくまで補助的な役割ですので、その子の症状や年齢を見ながら、必要に応じてご相談ください。

Q. ペットショップでグレード1の子犬を迎えたのですが、大丈夫でしょうか? 

多くの場合、適切な日常ケアと環境を整えてあげれば、安心して一緒に暮らしていけます。ぜひ一度、動物病院で改めて診せていただき、その子に合った長期的なケアの方針を一緒に立てましょう。

Q. グレード1でも手術することはありますか?

基本的には経過観察が中心です。ただし、強い症状が繰り返されたり、生活に明らかに支障が出るような場合には、手術を検討することもあります。

まとめ 

犬のパテラ「グレード1」は、もっとも軽度な状態ではありますが、「自然に治る」とは限らず、ワンちゃんによって経過がさまざまです。だからこそ、症状がない時期も定期的に診察を受け、そのときの状態に合わせて日常生活を考えていくことが、ひざを長く守ってあげるためのいちばんの方法になります。

港南台・本郷台・栄区桂台エリアにお住まいの飼い主さんを中心に、クロス動物医療センター港南台ではパテラの経過観察・診察・治療を行っております。  「ペットショップでグレード1と言われた」「健康診断でパテラを指摘された」など、少しでも不安なお気持ちがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

執筆:林 賢太郎 獣医師 / 横浜エリア統括獣医長(旧もも動物クリニック 院長)/ 横浜市栄区桂台中15-2 クロス動物医療センター港南台